徳之島でザトウクジラが観察できるシーズンは、前述の大回遊のなかで交尾、出産、子育てにやってくる12月~3月の時期が中心になります。年によって前後はしますが、例年12月中旬くらいから徐々にクジラたちの姿を見かけるようになり、1月に入ると個体数も増えてきて、2月~3月初旬にピークを迎え、3月下旬にかけてクジラたちがまたロシアやアラスカに帰りはじめてその姿を見る日が減ってきます。
もう少し詳しく説明します。12月中旬くらいにまずやってくるのは妊娠中の母クジラや単独のオスクジラであることが多いようです。この時期はたいてい単体で見かけることが多いようです。徳之島にとどまらずに沖縄方面まで南下していく個体もいるため比較的南に向かって泳いでいくクジラが多く観察されます。12月下旬~1月は子連れの母クジラを見かける機会がおおくなり、それに伴ってエスコートするオスや、メスをめぐってオスクジラが集まってきたりするため複数で見かけることが多くなります。この時期になると徳之島周辺にとどまって子育てをする母クジラが増えはじめます。2月には頭数もピークを迎え、子クジラもやや成長してブリーチングの練習や、母クジラと子クジラが寄り添ってゆったりと泳ぐ姿が観察しやすい時期になります。3月に入ると子クジラが大きくなってきて、母クジラとともに北上ルートをとりながらロシアやアラスカに旅立っていくクジラが観察されるようになります。3月中旬以降になると一気に観察できる頭数は減ります。またシーズン終盤のこの時期には沖縄方面で子育てをしていたクジラたちが北上していくルート上に徳之島が位置するため、タイミングが合うとその個体群の観察ができます。奄美群島~沖縄方面で子育てをしていたほぼすべてのクジラたちが北上を終わる3月下旬~4月はじめにクジラ観察のシーズンは終了します。